インフルエンザA型が流行る時期になると必ず耳にする言葉の一つがインフルエンザ脳症、脳炎です。

『脳炎』とは、インフルエンザなどの発熱を伴う感染症が原因であるウイルスが脳に侵入して炎症を起こすものです。脳自体に炎症が確認できないが、浮腫を確認できるものは『脳症』に分類されます。

また『脳症』の定義とは、脳からウイルスは検出されないが免疫反応が過剰に働くことにより、脳の働きに異常をきたすものを言います。

インフルエンザ脳症の病型はいくつかあります。

  • 『急性壊死性脳症』(きゅうせいかいしせいのうしょう)
  • 『ライ症候群』
  • 『出血性ショック脳症候群』

などに分かれます。

急性壊死性脳症はインフルエンザ脳症の中で最も症例数が多いため、狭義でインフルエンザ脳症と呼ぶこともあります。ここでは、急性壊死性脳症をインフルエンザ脳症としてご説明していきます。この病気は主に一歳から三歳の小さな子供がかかりやすいと言われています。

インフルエンザ脳症は、インフルエンザA香港型が主な原因です。

インフルエンザ脳症は以下のように進行していきます。

1,インフルエンザウイルスに感染
→発熱、鼻汁、体の痛みなどの一般的なインフルエンザA型の症状

2,免疫を調整する「サイトカイン」の働きを壊し、免疫反応が過剰に働き、致死的レベルの「高サイトカイン血症」を起こす。
→発熱後数時間から24時間以内に5分以上続くけいれんや意識障害、異常な行動をとる。

3,全身の細胞に異常をきたす
→下痢や嘔吐を伴うこともあり、目には見えませんが腎臓の機能が悪くなる場合もあります。

4,血管が詰まったり、多臓器不全に陥る
→血液の成分の一つである血小板が少なくなり、出血がしやすくなります。 これは体のどこの部分でも起こりやすく、「傷が出来て血が出ると出血が止まりにくくなる」ということがあります。 キズがなくても脳の血管が破れてしまい脳内出血を起こします。脳内出血を起こすと、出血した血液が脳細胞を破壊してしまいます。

インフルエンザ脳症が急性壊死性脳症と言われるゆえんがここにもあります。明確な原因は残念ながら現代の医学では究明出来ていません。

発症のメカニズム

発症メカニズムですが高熱(特に40度以上)続くと処方薬の解熱剤の使用により熱が下がります。高熱は体に侵入したインフルエンザA型を体が反応してでます。

高熱は体に侵入した、熱に弱いとされるインフルエンザA型に対して戦うための体の防衛反応です。解熱剤で解熱してしまってはせっかく高熱でインフルエンザA型と闘っていた力が弱くなり、同時にインフルエンザA型の力が優位に立ち、インフルエンザ脳症になってしまいます。

熱剤の頻回の使用や、アスピリン系の強い解熱剤により解熱しすぎたときが、危険です。小児においては高熱がでたときに突然笑い意味不明な言葉を話したりする熱性せん妄ということをおこします。インフルエンザ脳症でも初期の症状が重なるため鑑別が難しいと言われています。

大切なのはインフルエンザA型にかかってしまい治療中でもおかしいなと感じたら速やかな医療機関の受診をしましょう。
解熱剤の使用と種類を医師に相談し、医師から処方されたものを使うなどを心がけ、十分な注意を払ってください。

言葉が話せるようになった幼児においては、高熱がでたときに幻覚や幻聴が起こったり悪夢を見たりして、突然笑ったり泣いたり、意味不明な言葉を話したりする『熱性せん妄』(ねっせいせんもう)という症状がみられることがあります。インフルエンザ脳症でも初期の症状が重なるため、別の原因による高熱との鑑別が難しいと言われています。

大切なのはインフルエンザA型にかかってしまい、治療中でもおかしいなと感じたら速やかな医療機関の受診することです。